リチャード・エルフマン監督作品
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FORBIDDEN ZONE フォービデン・ゾーン<リミテッド・フォー・レイト・ナイト>
FORBIDDEN ZONE フォービデン・ゾーン<リミテッド・フォー・レイト・ナイト>
アリスが兎を追いかけて落っこちたのは不思議の国だったけど、ヤクの売人が自分の家の地下室で見つけたのは〈フォービデン・ゾーン〉だった。『禁断の惑星(原題:フォービデン・プラネット)』(1956年)と『トワイライト・ゾーン』(1983年)を足して2で割らないようなこの奇妙な世界。『禁断の惑星』のサントラが電子音のみで作られたサントラ史に残る名盤ならば、『フォービデン・ゾーン』もまたダニー・エルフマンという偉大な映画音楽家の誕生を告げた記念碑的な作品だと言っていいだろう。いや、まあ、ようするに監督であり兄であるリチャード・エルフマンに「ノー・バジェットの映画を作るんだけど、2週間で音楽作ってくれないかな?、ダニー」とお願いされた、っていうことなんですけど。

1976年に「ザ・ミスティック・ナイツ・オブ・ジ・オインゴ・ボインゴ」という、演劇もやれば音楽もやるパフォーマンス集団を結成したダニー。1977年には「世界歌謡祭」でアメリカ代表として来日もするなど、早くも話題を呼んでいた。そんな彼が、兄ちゃんのためなら!と(本人いわく)〈レコーディング・マラソン〉の果てに生み出したサントラは、ダニーの音楽的才能が開花した驚異のエンターテイメント大集成に仕上がった。テーマ曲こそ時代を感じさせるニューウェイヴ風味だが、ミュージカル・ナンバーのほとんどが戦前ジャズ?ヴォードヴィルを意識した狂ったアレンジ。ダニー自身も〈6次元の悪魔〉役としてバンド・メンバーと「ミニー・ザ・ムーチャー」の替え歌を熱唱するというサーヴィス過剰ぶりだ。ジョセフィン・ベイカーやキャブ・キャロウェイのナンバーに乗せて、フライシャー兄弟のカートゥーンを思わせるスラプスティックなキャラクターたちが歌い踊るなんて、漫画家ロバート・クラムから『ベルヴィル・ランデブー』(2004年)に至る戦前エンターテイメントへのナードな愛情を感じずにはいられない。

さらに弟ダニーが効果音をリズムに取り込めば、兄リチャードは場面転換やフィルムの早回しの演出で応える、そんなあうんの呼吸が、この異色のミュージカルを完璧なものにしていることは言うまでもないだろう。サントラ盤のインナーにツーショットで写っている兄弟は、おでこのあたりがソックリだ。

さて、このサントラをきっかけにバンド名を「オインゴ・ボインゴ」に縮めたダニーと仲間たちは、1981年にメジャー・デビュー・アルバム「オンリー・ア・ラッド」を発表。1995年のハロウィンに行われた解散コンサートまで10年以上に渡って音楽活動を展開していく(最後にはバンド名はさらに短く「ボインゴ」となる)。ホーン・セクションを従えた8人編成という大所帯でスタートした彼らは、オハイオの変態テクノポップ、ディーヴォや50'sなパーティー・サウンドで意表を突いたB-52'sなんかと並ぶ異色のUSニューウェイヴ・バンドとして脚光を浴びた。また彼らは『ティーン・ウルフ』(1985年)、『ときめきサイエンス』(1985年)、『悪魔のいけにえ2』(1986年)、『サムシングワイルド』(1986年)など、映画への曲提供も多かったが、それは同時にダニーの映画音楽への興味をも意味していた。

やがて、「オインゴ・ボインゴ」の大ファンだったティム・バートンが初監督作『ピーウィーの大冒険』(1985年)以来、ダニーを起用し、『バットマン』(1989年)の大ヒットでダニーは押しも押されぬ売れっ子作曲家に。現在では『スパイダーマン2』(2004年)や『ハルク』(2003年)、『レッドドラゴン』(2002年)など、ビッグ・バジェットな映画をサラリとこなしてる。2003年には女優ブリジット・フォンダと結婚し、いまやハリウッド・セレブとなったダニーだが、この『フォービデン・ゾーン』の音楽には、そんな彼の若き音楽ホルモンがたっぷり詰め込まれて、それはもう、はち切れんばかりなのだ。

(text by村尾泰郎)


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